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カメラ・レンズの知識【収差について】

こんにちは🌟
写真家のJimaです(^^)

はじめに

ここ最近、高品質なレンズが当たり前のように登場している中、自分が「各収差を徹底的に抑制し」という表現を使うことが増えたなと思います。

数年前のレンズは収差が強く出て当たり前で、レンズの味として楽しめていましたが今は「どこか収差出ていないかな?」と意地悪な見方をするようになりつつあります。

逆にS-Lineではない無印レンズなどで収差を見かけると安心しています(笑)

今回はカメラ塾としてレンズの収差について解説します。

収差を知っているとカメラに限らずメガネなどレンズを用いた製品について調べる際、今より少し深く理解できるので教養として役立ちます。

理科(物理)などが得意な方からすると眠くなるかもですが、就寝前のラジオ感覚で聴いていただけると嬉しいです(^^)

収差とは何か

収差とは、光学系における理想的な結像と実際の結像とのズレのこと。

球面収差やコマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差などがあります。
理論上の理想レンズは無収差ですが、実際にはさまざまな理由で収差が残ります。

そして、各収差の残し方やバランスの取り方が、レンズの光学設計上の”味付け”であり、レンズの”味”となります。

ちなみに、このレンズの“味”から生まれるボケ感は、いったん2次元化してしまった画像を後から画像処理しても得ることはできません。

アナログ情報をデジタル化してしまうと、二度と元のアナログ情報は再現できないのと同様です。
“味”のあるレンズだけが可能にする表現になります。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン
https://www.jp.nikon.com/company/technology/stories/1909_optia

理想は実際と結像のズレがなく収差を気にしなくていいことだと思います。

ただ、収差が残るならレンズの味として活かしちゃうのは良い考えですよね。

収差の原因

レンズの収差はレンズが球体の一部であることと光の波長による屈折率の違いに起因しており、これが収差を完全になくすことが出来ない理由です。

また収差は撮影時の距離や絞り値によっても変わりますが、すべての収差が軽減されることはないです。

写真撮影用のレンズだけではなく天体望遠鏡、顕微鏡なども収差をできるだけ少なくするように補正されいますが完全に取り除くことはできません。

ちなみに残った収差を残存収差と呼びます。

ザイデルの5収差

先の引用で少しフライングしましたが(笑)

理想的なレンズは点は点に、平面上の被写体は平面上に結像、四角いものは四角く結像することです。

この理想的なレンズからのズレが収差になるのですが、ザイデルさん(1821 – 1896年|ドイツ)は、収差を5つに分類しました。

  • 球面収差
  • コマ収差
  • 非点収差
  • 歪曲(わいきょく)収差
  • 像面湾曲(わんきょく)

※ザイデルの収差を単色収差と呼ぶこともある。

収差と撮影距離の関係

レンズは一般的に近距離にピントを合わせると収差は増えがちです。
その収差が許容できる範囲はメーカーの基準によって異なりますが、最短撮影距離があります。

それより短い距離でピントを合わせることが、物理的にレンズのピント調整ができないようになっています。

収差とレンズ、絞りの関係(回折に留意)

聞いたことありませんか?
「レンズは絞りを開放絞りから2~3段ほど絞った方が綺麗に撮れるよ」という話。

最近のS-Lineなどを利用していると、絞らなくても開放から綺麗に撮れるので聞くことも減りましたが、高品質なレンズを除くと今でも一般的なレンズ(非S-Lineなど)は2~3段絞った方が多くの収差を軽減できる傾向があります。

とはいえ、何事もほどほどにという話で絞り値はF8~F11ぐらいまでが理想です。
これを極端に「F22まで絞ればいい」と考えてしまうとまずいです。

収差は少なくなるものの、今のカメラは回折補正があるとはいえ回折現象が発生して解像力(シャープネス)は低下するので留意が必要です。

歪曲収差(わいきょく)

歪曲収差(ディストーション)は画像の周辺の形を変えてしまう収差で格子状の被写体を撮影した際に画面の周辺部で樽型のように丸く曲がったり、シュートを決めた後のサッカーゴールみたいに糸巻型となり直線が画像上で直線に写らず歪む現象です。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

撮影レンズは複数のレンズエレメントを組み合わせてなくすことは難しくとも歪曲収差を実用的に目立たないくらいにまで少なくしています。

歪曲収差は絞りを絞っても軽減することはないので留意
樽型と糸巻型が混ざった陣笠型(じんがさ|昔の武士が被っていた)もある

歪曲収差を感じさせない焦点距離がある

一般的にズームレンズでは望遠側で糸巻型、広角側で樽型の歪曲収差が現れることが多いです。

対して中間の焦点距離では樽型と糸巻型が打ち消しあって歪曲収差が少なくなる焦点距離があったり、樽型と糸巻型が混在する焦点距離もあります。

これは使ってみないとわからないですが、大三元ズームならメーカーを信じて良いと思います。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

歪曲収差を軽減するレンズ構成

歪曲収差は一派的に望遠レズよりも広角レンズで発生することが多いのですが、軽減するために考えられたのがレンズ構成を対称型に配置することです。

代表的なレンズはカールツァイスのビオゴン(Biogon)です。

出典:株式会社コシナ(Biogon T*2,8/28 ZM)

球面収差

球面収差はレンズに光軸と平行な光を入射した場合にレンズの中心部(光軸に近い部分)に入射する光と周辺部に入射する光が光軸上の1点(焦点)に集まらず、前後にズレてしまう収差です。

レンズの周辺部に入射した光はレンズの中心部を通った光よりもレンズに近い位置に集まってしまいます。

球面収差

球面収差の大きいレンズで撮影した場合、シャープではなくコントラストの低い結果となります。

ただ、これも”レンズの味”なので、逆に球面収差を活かしたソフトフォーカスレンズなどがあります。

ポートレート撮影などで人気があったのですが、今は便利なソフトフィルター類や現像ソフトで明瞭度等で調整することも可能なので、レンズに表現力を依存する必要も薄れています。

とはいえ、NIKKOR Z 35mm f/1.4 や NIKKOR Z 50mm f/1.4 などは魅力的に感じるのは面白いですよね。

球面収差を軽減するには絞る

球面収差は大口径レンズや広角レンズで特に大きく発生しやすい収差です。

開放絞りの撮影で最も大きくなる一方で、一般的に1~2段ほど絞り込むことで解消できるとされています。

歪曲収差を軽減するレンズ設計の話

大口径レンズは開放絞りのF値が1.2や1.4、1.8に2など明るいものが多いです。

F値の値を小さくすると暗い被写体を撮影したり背景にボケ味を加えたりと開放を使うことも多いです。

ただ、明るくてボケ味が魅力的でも開放絞りで撮影することで球面収差から良好な結果が得れない場合は本末転倒です。

それを解消するというか、両立をするために非球面レンズを使ったり凸(とつ)レンズと凹(おう)レンズを適切に組み合わせて球面収差を軽減している。

球面収差が大きいレンズでは絞りを開けた状態と絞った状態では焦点の位置がズレてしまう現象を焦点移動と呼びます。

コマ収差

球面収差は光軸と平行な光が光軸上の1点に集まらない現象でした。

対してコマ収差は光軸と平行ではない平行光線をレンズに入射させた場合にレンズの中心部を通った光(被写体の像)とレンズの周辺部を通った光(これも被写体の像)が、結像面の1点に集まらず横方向にズレてしまう現象です。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

コマ収差は画面の中心部では現れず、画面の周辺部で大きく表れます。

コマ収差を実用的に軽減するには球面収差と同じく絞り込むのがオススメです。

※コマ収差が大きいレンズを使って同じ円形の点光源が一面にある夜景などを絞り開放で撮影すると画面の周辺部に写りこんだ点光源の像は彗星(コメット)が尾を引くような形や鳥が羽を広げた形になります。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

ボリュームのある内容なので、ここまでをひとまず動画にしています。

非点収差

縦線と横線が綺麗に並んだ方眼紙などを撮影した場合、画面の中心部は綺麗でも周辺部では縦線と横線のピント位置が異なっているように写ることです。

中心を通る放射状の直線と中心を円の中心とする曲線での交点部分でピント位置が異なる結果、大きくボケてしまう収差です。

非点収差は画面の中心から離れるほど大きくなる傾向があり、絞り込むことで解消しますが、あくまで小さくなるだけでなくすことはできません。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

像面湾曲(わんきょく)

光軸に垂直な平面上の被写体の像は、光軸と垂直に交わる平面上に像を結ぶのが理想です。

ただ、現実では難しく結像面が曲面になってしまうことこの現象を像面湾曲と呼びます。

対策として、複数のレンズを組み合わせて補正をします。

対策をしっかりしないと画面の中央部でピントを合わせると周辺部がボケて、逆に周辺部でピントを合わせると中心部がボケてしまいます。

像面湾曲も絞り込むことで被写界深度が深くなるため、ある程度は影響を軽減できます。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

非球面は凄い

レンズ構成などの話で登場することの多い、非球面レンズはレンズ面を完全な球体ではなく”うねり”のある形にしています。

非球面レンズを使うと球面収差や歪曲収差を軽減することが可能なので、大口径レンズや広角レンズ、ズームレンズで活躍することが多いです。

非球面レンズを使うことで比較的、レンズ枚数を減らすことが可能なためゴーストの発生を抑えることにも役立ちます。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

色収差もある

併せて、私たちに身近な色収差も知っておきましょう。

レンズに入る光は波長によって屈折率と焦点の位置が異なります。

この色の異なる光によって生じる収差が色収差です。

一般的に焦点距離の長い望遠レンズなどで大きく発生する傾向があるため、レンズ素材となる硝材(しょうざい)を使い分けたり構成を調整しています。

波長と屈折率の話

波長の短い青系統の光は屈折率が大きく、波長の長い赤系統の光は屈折率が小さいです。

様々な波長の光が混ざっている場合は凸レンズに光が入り、波長の短い光は焦点の位置よりも手前のレンズ側の近くに集まります。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

軸上色収差と倍率色収差の話

この色収差には波長(色)によって結像位置が前後する軸上色収差と波長(色)によって像倍率が異なる倍率色収差があります。

光軸に色々な波長の光が混ざった白い光を凸レンズに入射した場合、波長の短い青系統はレンズ側に近い方へ対して波長の長い赤系統はレンズから遠い方に集まります。

実は同様に垂直方向にもズレが出ており、このズレを倍率色収差と言います。

倍率色収差は画面の周辺部にいくほど大きく現れます。

出典:株式会社ニコンイメージングジャパン

軸上色収差を軽減する方法

軸上色収差は波長(色)によって屈折率が異なることに起因しているため、逆に屈折率の差を利用して軽減しています。

様々な硝材の中から波長の違いによる屈折率差(分散)小さい凸レンズ(クラウンガラス)と波長の違いによる屈折率差が大きい凹レンズ(フリントガラス)を組み合わせます。

※他にも低分散ガラスや異常部分ガラスなどを使って色収差を提言しています。

あとは絞り込むことでレンズ周辺部の光を減らすことが出来る点も知っておきたいところです。

倍率色収差を軽減する方法

倍率色収差は軸上色収差に比べて補正が難しいと言われています。

倍率色収差を減らすには対称型のレンズ構成として絞り羽根を中央部に配置することですが、広角レンズなら可能ですが、望遠レンズでは難しいの現状です。

収差対策は良いレンズが高い理由のひとつ

各収差について色々と解説しましたが、楽しんでいただけましたか?

正直、細かい話に興味がなく綺麗に快適に写真が撮れたら良いという方も多いと思います。

ただ少しでも「レンズ高いな」「似たようなレンズなのに価格差が気になる」などを考える方は、ひとつの要因に高品質レンズは各収差へシッカリ対策している点も知っておくと納得できると思います。

極論、収差が味なのであれば各収差を発生させつつ撮ればいいだけのこと。

それが「この癖のあるレンズで撮るのが楽しい」という話であればいいと思います。

あくまで撮るための道具で、収差なく綺麗に撮りたいなら良いレンズを揃えるだけの話です。

そして、携帯性(サイズや質量)にAF性能(モーターや駆動部分の質)にデザイン、レンズファンクションの操作性などから総合的に判断して良いレンズを買うかを考える基準となれば幸いです。

Nikon Zマウントも当初は各収差を徹底して抑制したS-Lineが多かったですが、今は程よい収差は味として発生させつつ(収差を残しつつ)価格を抑えた非S-Line(無印)レンズも増えてきました。

各自の財布事情や求める描写性能、収差の抑制度合いなどから判断するのが良いかなと思います。

私も購入する全てのレンズがS-Lineではありません。

中には携帯性や価格重視で一般レンズ(非S-Line)を購入することも多いです。

ただ、お仕事やシッカリと撮影データを綺麗な状態で残しておきたい場合は硝材勝負にもなるレンズでアドバンテージというか安心を得れるよう高品質レンズを選びます。

レンズもカメラも適材適所ということが伝われば幸いです(^^)

ボリュームのある内容だったのでYouTubeで2回に分けて解説しています。

▼YouTubeでも解説しています|チャンネル登録よろしくお願いします
前半
後半

参考ページ

収差
f/1.8が描く新たな世界 NIKKOR Z f/1.8 レンズシリーズ | ニコンイメージング
絞り開放から高性能なNIKKOR Z f/1.8単焦点レンズシリーズ。自然で柔らかなボケ味や動画撮影にも配慮され、従来のf/1.8単焦点レンズを超越する高い描写力を作品や写真家のインプレッションと共に...

この記事を書いた人
Jima
Jima
この記事を書いた人

こんにちは(^^)
写真家のJimaです。

フォトスタジオのディレクター兼フォトグラファーとして従事。
管理職として得た経験と知識を活かして法人設立、代表に就任。

写真撮影の手法や技術、機材の特徴解説など情報発信に加え
公募展へのゲスト出展やメディア寄稿、写真集の販売など活躍の場を広げる。

◆YouTubeチャンネル|カメラ塾【JimaTube】
https://www.youtube.com/@jimatube
カメラや写真、 撮影知識の情報を「楽しく学ぶ」をコンセプトに発信中
総再生回数 920万回、1200本以上の動画を投稿(24年8月時点)

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